うつ病は、感情が何らかの理由で抑制され、社会生活をおくるだけの気力が起こらず、社会的に適応しにくくなる病気です。うつ病患者もしくはうつ病予備軍と されている人は増加の一途をたどっています。そんなわけで、現在では様々な抗うつ薬が開発され、その治療効果が認められています。  さて、抗うつ薬を開発するには、やはり動物実験が必要になります。そこで問題になるのは、「動物はうつ病になるのか?」つまり病態モデル(うつ病のよう な症状を示す動物)が存在するのか?ということです。薬の開発に通常用いるラットやマウスなどのげっ歯類は、見ただけでは感情の変化をつかむことはできま せん(できるのかもしれませんが、ローレンツ(動物行動学者)くらいでないと無理でしょう)。分かることと言えば、動きが激しいときは元気で、動かないと きは眠いかしんどい、ということぐらいでしょうか。うつ病を表す病態モデルはなさそうに思えます。  確かに、動物がうつ病になってるかどうかは(落ち込んでるかどうかは)わかりません。しかし、抗うつ薬に「反応する」ような病態モデルは存在します。反 応するというのは、動物の行動に影響を与えるということです。 たとえば、俗に「絶望モデル」とよばれる実験があります。マウスを水槽にたまった水の中に落とします。水槽のなかには、マウスがつかまれるような足場は ありません。マウスは泳げるので、足場を求めてひたすら泳ぎますが、足場は決して見つからず、ひたすら泳ぎ続けます。そして、ある一定時間たつと、マウス はパタッと動きを止めます。この行動が、マウスが足場を探すのをあきらめて絶望してるように見えるので、絶望モデルと呼ばれています。  抗うつ薬は、このパタッと動きを止めるまでの時間を長くします。これを人間流に解釈すると、絶望する(うつ状態になる)間での時間を延長する=うつ状態 を治す、ということになります。  ただし、これはあくまで人間が勝手に解釈した理屈です。もしかしたら、マウスは泳ぐのに疲れて動けないだけかもしれません。抗うつ薬を飲ませると、体力 の落ちがカバーされて泳ぐ時間が長くなっているのかもしれません。 なぜこのモデルが人のうつ病に効くと断言できるんでしょうか?この絶望モデルでは抗うつ薬の薬理作用が認められるのですが、その薬理作用が動物のうつ状 態を改善しているのか,まったく別の作用を見ている(体力アップとか)を見ているのかどちらなのか,というところまで書きました。実は,この絶望モデルと いう実験だけでは,上記の疑問には答えることができません。つまり、動物がうつ病になるかという疑問には答えることができません。  では,なぜ「絶望モデルで効く薬」が人のうつ病に効くといえるのでしょうか? この疑問に答える前に,いわゆる向精神薬(精神作用に影響する薬)がどのような過程で見つかってきたのかを説明する必要があります。向精神薬が見つかっ たのは,約50年前のことです。この時期には,麻酔薬の開発が盛んに行なわれており,ネズミを使って動物の行動を見る実験が盛んに行なわれていました。単 純に薬を打って寝るかどうかを調べてたんですが、この過程で,ある薬物はネズミをおとなしくさせる(眠るわけではない)という薬理作用をもつことが分かり ましたここから飛躍があるんですが、その薬を統合失調症の患者に投与してみようという実験が行われました。統合失調症の症状に、感情をコントロールでき ず、妄想や異常行動をするというのがあります。当時の医者は、「動物をおとなしくさせる薬理作用を持つ薬ならば、このような人をおとなしくできるだろう」 という、今から考えると結構乱暴な論理で、この実験を行いました。その結果、統合失調症の患者の症状の多くが改善されるという劇的な効果がみとめられまし た。早速これらの物質(たとえばクロルプロマジン)は、統合失調症薬としてデビューし、世の中で広く使われるようになり、向精神薬という分野の薬が登場す ることとなりました。  これ以降、統合失調症の薬を開発する過程で、それらの化合物がうつ病などの他の精神疾患患者に対しても効果を持つかを調べるという実験が積み重ねられ、 その結果人のうつ病に効く薬が見つかるようになってきました。そして、うつ病の薬ができると、逆にその薬をつかって、どんなメカニズムで効くのか、動物に どんな作用をしめすか?という研究が始まりました。この研究の一環として絶望モデルが見いだされたのです。そして、新しいうつ病の薬を絶望モデルで評価 し、効果があった化合物をうつ病患者に投与すると確かに効果がある、という結果が多くの化合物について確認されました。これが、「『絶望モデルで効く薬』 が人のうつ病に効く」といえるといえる根拠です。   つまり、動物が人のうつ状態にあるかどうかは関係なく、極端にいえば、クロルプロマジン以降の長い経験によって「『絶望モデルで効く薬』が人のうつ病に効 く」といえるようになったということです。新薬開発は、どんな新薬を作るか?ということを決めることから始まります。 どのような商品にも言えることですが、新薬開発を行う時は、どんな病気に対する薬が求められているかということを、製薬会社が把握することが重要です。 言うまでもなく、癌やエイズ、アルツハイマー病、糖尿病などの病気に対する新薬へのニーズは高く、どの製薬会社でも癌、エイズ、アルツハイマー病の新薬の 開発を行ってます。しかし、他の製薬会社との競争に勝つには、将来どのような病気に対する新薬が求められるかを予測し、他の製薬会社に先立って新薬作りの 研究を始めることが必要です。 新薬を作るには、企画立案からスクリーニング、安全性試験、臨床試験を経て、最終的に新薬として発売されるまでに10年程度かかります。つまり、製薬会社 は、新薬を作るにあたって10年後どんな病気に対する新薬が求められるかを考えなくてはいけません。10年かかって作ってみたもののその新薬に対するニー ズがない、つまり売れないということになれば、製薬会社にとって大きなダメージになります。 毎年、新しい薬のプロジェクト募集があるのですが、いつも10年先ということで悩みます。自分が年寄りになったらどんな薬が欲しいかななどとは思ってるん ですが、10年後を予想するのは難しいです。その分、新薬は当たればでかいんですけどね新薬の開発において、他の製薬企業が開発した薬の欠点をなくし、よ り改良された良い薬である新薬を開発するというのは、よく使われる方法です。既存の薬の欠点をなくす方法をとる場合、これまでの薬(化合物)と同じような 構造式を持つ薬を探索することが多く、この方法だと新薬開発が成功する可能性も高いです。ただし、既存の薬の改良については、どの製薬会社も同じようなこ とを考えてるので、この方法での新薬開発にはスピードが要求されます。  例えば、 ★注射しか出来ない薬を、飲み薬に改良する。 ★ 1日3回服用しなくては行けない薬を、1日1回服用ですむように改良する。 ★ 一回当たりの薬を飲む量を減らすよう改良する(1回3錠必要な薬を1錠ですむようにする) ★薬剤耐性菌(抗生物質に対する抵抗性を有する菌)に対し効果を示すように、これまでの薬を改良する。 ★ 副作用をこれまでの薬より減少させる(これはちょっと難しい) など、まだまだ沢山あります。 基本的に、患者さんが困ってる点を改良するということなので、臨床のお医者さんからの薬に関する情報が重要な役割を果たします。が数多く作られました。例 えば、精神病に対する薬(クロルプロマジンなど)、循環器系に関する薬(ジギタリスなど)、糖尿病の薬(インシュリン、スルフォニアウレア剤(SU剤)な ど)、抗生物質(ペニシリンなど)などです。  これらの薬はどのようにして見つかったのでしょうか? ★自然界から成分を見つける ジギタリス、ペニシリン、インシュリンなどは、このパターンに当たります。ジギタリスは、昔から病気に効くと伝えられた薬草の成分を分析して、薬効を有す る成分を抽出することより見つかりました。ペニシリンは、たまたま青カビによる細菌の発育阻害作用が見つかり、その成分を抽出することにより見つかりまし た。インシュリンは、動物の血糖値をコントロールする物質を探索することにより見つかりました。このようなアプローチは、現在でも抗生物質や、免疫抑制剤 などで行われています。 ★これまでの薬の副作用から、別の病気に対する薬を見つけ出す。 抗生物質のサルファ剤の一種に血糖値を下げる副作用が見いだされたことから、このサルファ剤を改良することによりSU剤という血糖降下薬が発見されまし た。また、麻酔薬の効果を高める薬剤を動物を用いて探索しているときに、たまたま抗精神病作用をもつ化合物がみつかったことから、クロルプロマジンが発見 されました。バイアグラも、もともと循環器系用の薬を探索しているときに、副作用として勃起誘発作用が見いだされたことから発見されました。  このようなアプローチは、薬物の評価をしているときに、偶然発見するという場合が多いです。私たちも、薬を開発するときには、副作用について徹底的に調 べます。これは安全性の確認を主目的としていますが、新しい薬の種が見つからないかを確認するという目的も持っています。新薬開発の方法は、時代とともに 変わって来ています。 20年ほど前までは、「薬を見つけて病気のターゲットも見つけよう」というコンセプトで作られた新薬がほとんどでした。しかし、近年のバイオテクノロジー の発展により、新薬開発の究極の方法「病気の原因であるターゲット分子を見つけて、そのターゲット分子の働きを抑える」という方法が可能になりつつありま す。  一昔前は、新薬開発の得意とする製薬会社が薬を見つけてから、その新薬を使って大学の研究者が新薬のターゲット分子の解明をしていました。それが今で は、病気の人で増えたり減ったりしている遺伝子(またはタンパク質)を見つけ、これをターゲットとした新薬を作ることが可能になりました。遺伝子を見つけ る作業自体は簡便な方法で行えるので、大学院の学生が新薬ターゲットをみつけることも(理屈の上では)夢ではありません。  誰がターゲット分子を最初に見つけるか、誰がそのターゲット分子についての特許を最初にとるのか?新薬開発の元となる特許取得には、製薬会社、大学など が激しく入り乱れ、激戦をくり広げています。大学との共同研究で新薬ターゲットを探す試みも、沢山行われています。  しかし、ターゲット重視の新薬開発はリスクが高い(試験管レベルでは効くけど、動物まるごとには効かない可能性がある)とも言われています。これまで、 ターゲット重視の方法により、抗がん剤などで新薬開発の成功例が出ています(イレッサ、グリベックなど)。これから、どんな分子をターゲットにした薬がで てくるのか、注目していきたいと思います。これまで、新薬開発のパターンをいくつか紹介して来ましたが、いざ実行に移すとなると、起案書を書かないといけ ません。どの業界でもそうなんでしょうが、起案書(企画書)を書くのは難しく、じっくり時間をかけて書いてます。後輩や上司といろいろ話し合って、1ヶ月 くらいはかけます。  薬と言えど商品なので、どの病気に対する新薬か、どれだけのニーズがあるか、他の薬に比べ、新薬の売りになる所は何かというのことは、もちろん書かなく てはいけません。それに加えて、これまでに知られているメカニズムの新薬か、全く新しいメカニズムの新薬か、新しいメカニズムならば、実現可能性 (feasibility)を確認するための実験、新薬の効き目を評価するための実験などをどうするか、などなど調べることは山ほどあります。 論文を沢山読みますし、余裕があるときは内緒で試しの試験をしたりもします。基本的に新薬開発の起案者がプロジェクトのリーダーになるので、中途半端な調 査で始めると、後で自分が後悔することになります。  起案書は、選考会にかけられ、何段階かの審査をクリアして、はじめてプロジェクト開始の許可が下ります。会社に入って、自分の起案が通ったのは2回。ど ちらも1−2年くらいリーダーとして実験しました。どちらも成功はしませんでしたが、自分のやりたいことが出来ただけでもラッキーだったと思います。起案 書が通り、新薬開発プロジェクトが始動となるといよいよ実験が動き出します。 まずは、実験材料作りと実験方法の検討から(約半年)。 これまで知られていない,まったく新しいメカニズムの新薬を作るときは,材料作りから始めます。まずは,新規メカニズムにかかわる標的タンパク質(酵素や 受容体)を作るところから始めます。これまでに知られている類似タンパクの遺伝子の配列などを参考にして,標的タンパク質の遺伝子を入手します(クローニ ング)。遺伝子が手に入れば,この遺伝子を適当な細胞に入れ(トランスフェクト),目的の標的タンパク質を産生する細胞を選び出せば(ステーブルセルライ ンの取得),標的タンパクを得ることができます。 材料が手に入れば,つぎは新薬の評価に必要な実験方法を検討します。ここで検討するのは,大量のサンプルをすばやく評価するための実験法の選択です。大量 のサンプルをすばやく評価することを「HTS(ハイスループットスクリーニング)」といいます。HTSでは,ロボットによる自動化が行なわれ,1日で1万 個以上の化合物を評価しています。材料の種類により,HTSで用いる実験方法が異なるので(名前だけ挙げるとHTRF, Repoter gene assay, SPAなど),どの方法が最適かを検討します。  ここまでの仕事は,遺伝子&HTS専門の部署の人が行います。その間,私たち薬理屋の仕事は,新薬の標的である病気のモデル動物を作成し,この動物を用 いて新薬の効き目を調べる実験方法を確立します。実験手技の取得から始める場合も多く,実験条件の検討などであっという間に期間が過ぎることが多いです。  実験材料と動物実験の準備ができると,いよいよ新薬開発の最初の難関,ランダムスクリーニングの開始です。製薬会社は、これまで作って来た自社化合物 や、業者から購入した化合物を数百万個持っています(これを化合物ライブラリと呼んでます)。この化合物ライブラリのなかから、新薬の元となる化合物を探 し出すことから宝探しは始まります。このように、薬の構造とかにはこだわらず、すべての化合物について化合物の作用を調べるやりかたを「ランダムスクリー ニング」と呼んでいます。   ランダムスクリーニングで見つかった化合物が、そのまま新薬になることはほとんどありません。通常は、まず化合物ライブラリの中で最も活性があり、扱いや すい化合物を見つけます(これを「リード化合物」と呼びます)。次に合成屋さんがリード化合物に手を加え、どんどん活性が高く、安全で、取り扱いやすい化 合物を作っていきます。  化合物ライブラリの中で、作用を示す化合物(ヒット化合物と呼びます)の割合は、0.5%程度。で、ヒット化合物から更に絞り込みを行います。ヒット化 合物のなかの偽陽性(陽性に見えるが、実際は作用がない)化合物を除くため、同じ実験をもう一度行い、データの再現性を確認します。更に、他の実験によっ て、作用があること、ターゲットに特異的な作用であることを確認します。   この段階で、数十個以内に絞り、更に詳しいチェックをしていきます。動物に飲ませたときに血液中にきちんと入るか、強い毒性はないか、水に溶けやすいか、 などなどいろんな項目があります。すべての項目で優れた化合物というのは、なかなか出ないので、比較的欠点が少ない化合物をリード化合物として選びます。 欠点は、合成屋さんによる合成展開でなくしていくのです。  この間、約半年。ヒット化合物が出ずに中止になるプロジェクトも少なからずあります。ここで選ぶリード化合物が、このあとのプロジェクト進行に大きく関 わってくるので、新薬開発の中の難所の一つといえます。  リード化合物がきまると、いよいよ合成屋さんと薬理屋の共同作業が始まります。その様子は、また次回。ランダムスクリーニングで数百万個の化合物を評価 して、0.5%位(数千個以下)のヒット化合物を見つけると書きました。ヒット化合物は、基本的に活性の強い順に選び出しているのですが、活性の強さはど うやって決めているか書いてなかったので、今回は薬の強さの表し方を説明します。  タンパク質(酵素、受容体)の働きを抑える薬の場合は、タンパク質の作用を押さえる薬の濃度を指標にします。よく使われるのは、タンパク質の作用を半分 阻害する濃度(IC50値)です。IC50値が低いほど、少量の薬で作用が出ます。ランダムスクリーニングでヒットした化合物のIC50値は、大体 0.1-1 mg/L くらいです(普通はモル濃度という単位を使い、10uM程度の値です)。1リットルの水に1mg の薬ですから、すごく低い濃度に感じます。しかし、実際に薬として使うには、更に1/10〜1/100のIC50値を示す必要があります。  一方、タンパク質や細胞の作用を強める薬の場合は、最大作用がどれくらいかが指標になります。ここでは、ある細胞に物質Aという化合物を作らせる薬を考 えます。薬は、濃度が高くなるほど作用が強くなる性質があります(濃度依存性といいます)。しかし、どこまでも強くなる訳ではなく、ある濃度以上では作用 が頭打ちになり、それ以上強くならなくなります。上の例の場合、ある一定以上の薬の濃度で、細胞で産生される物質Aの量は頭打ちとなり、これ以上増加しな くなります。このときの物質Aの量が、薬の最大反応となります。薬によって、最大反応に差が出てくるので、出来るだけ最大反応が大きい薬を選ぶことになり ます。  また、最大反応の他に、IC50と同様なEC50値という指標(最大反応の50%を示す濃度)もありますが、一番最初の段階ではEC50値の方が優先さ れることが多いです。  ランダムスクリーニングで見つけた化合物は、IC50値や最大反応が十分ではありません。また、ランダムスクリーニングで得られた数千個のヒット化合物 の作用はドングリの背比べであり、薬の作用以外の点でヒット化合物を数個に絞り込むための作業が必要です。00万個もスクリーニングをすると、ヒット化合 物が数百個になることがあります。この中から宝(薬)の原石となる化合物を見つけないといけません。薬理作用の強さとしては、ほぼ横並び、ドングリの背比 べであることが多いです。では、これが全部原石なのか。。  実は、薬理作用があるといっても、それが有望な化合物とは必ずしも言えません。ヒット化合物のなかには偽陽性化合物つまり偽物が沢山混ざっているので す。  まず、薬理作用があったというデータ自体が間違いということがあります。100万個の化合物をスクリーニングすれば、1%のミスで1万個の誤った結果が 出て来ます。人間が実験しても、ロボットが実験してもこれだけは改善されません。 ただ、この場合、偽陽性化合物を見つけ出すのは簡単です。ヒットした化合物について同じ実験をすればよいのです。すくなくとも2回同じ薬理活性が出たら、 データ自体が信用できると考えられます(再現性)。ランダムスクリーニングでは、意外にデータの再現性が得られない場合が多いです。  次に、作用の特異性がない化合物は使えません。作用の特異性というのは、あるターゲットにのみ薬理作用を持つということです。たとえば、タンパク質Aの 働きを阻害する化合物を探すとします。このとき、再現性のあるヒット化合物がやはり100個ぐらいは残るでしょう。ここで、全く作用が異なるタンパク質 B、およびターゲットになってほしくないタンパクCについて、ヒット化合物がそれぞれのタンパクの作用を阻害するかを調べます。タンパク質Aの作用を阻害 し、タンパク質B、タンパク質Cの作用を阻害しない化合物が、真のヒット化合物と考えられ、他の化合物は偽陽性化合物です。   特異性の段階でも結構な数の化合物がふるい落とされ、この段階で真のヒット化合物は10個程度まで絞られます。数百万個の化合物から、様々な行程を経て 10個程度に絞られた化合物は、いずれも同じ薬理作用を持ち、ターゲットに対して選択的に効くことが確認できています。  ここから先は、化合物の弱点を探して、一番弱点が少ないものを選び出すことになります。どの化合物もある程度の弱点は持ちますが、その弱点は、これから の化合物合成により構造を変えていくことで克服します。 ヒット化合物の代表的な弱点をいくつか挙げると、 1) 溶けない(溶解性が低い): 水もしくは人に投与可能な液体に溶けるか?ということ。特に注射剤を作る際には必須の条件です。残念なことに、新薬の元にな る化合物は、水に溶けないものが多いです。私たちが実験につかうときは、有機溶媒(人には投与できない液)に一度溶かし、それを水で薄めたりしますが、実 際臨床で使う際はそういう訳にはいきません。合成によって水に溶けるような構造に変えていくことになります。 2) 特許がある:世の中、薬に適した化合物の形(パターン)がどうもあるみたいで、せっかく見つけた化合物も、他の会社の特許が既に出されている場合は使えま せん(結構あります)。これは、合成により化合物の形を変えて、特許に引っかからなくしなければいけません。 3)毒性がある:いくら効く化合物でも、毒性があっては意味がありません。ただ、毒性の原因がはっきりしているときは、その毒性についてのチェックを行い ながら化合物を合成していくことになります。最近注目されているのは、HERG(ハーグ)というタンパク質の働きを抑制することで生ずる毒性です。 HERGの働きを抑制すると不整脈、つまり心拍のリズムが乱れ、死に至ることが最近報告されています。実は、このタンパク質HERGの働きを抑制する化合 物は結構あるので、出来るだけ最初の段階で、HERG阻害活性がある/ないを確認することが、今後合成をしていく上で大切です。 4)合成しにくい:似たようなキャラクターの化合物が多いときは、構造を変えにくい化合物を避けることが多いみたいです(あくまで薬理屋からみたイメージ ですが)。  まだまだいろいろあるんですが、とにかくこれらの弱点を捕まえた上で、これからの合成の出発点となる化合物を選びます。これをリード化合物と呼びます。 リード化合物は構造パターンの違いから、数化合物が選ばれることが多いです。ようやく新薬開発の原点となるリード化合物が決まりました。(リード化合 物ー>数百万個の化合物から選ばれた、薬作りのスタートとなる化合物)ここから先は、合成屋と薬理屋の共同作業が始まります。  まず合成屋さんはリード化合物の構造の一部を変えた化合物をどんどん合成します。具体的には、リード化合物に他のパーツ(官能基とか側鎖とか呼びます) をくっつける、リード化合物中のパーツを似たようなパーツに入れ替える、などなど。構造式をよく見比べないと気がつかないようなわずかな違いを持つ化合物 (誘導体とか周辺化合物とかいいます)をこれでもかこれでもかと合成します。最近はコンビナトリアル合成(コンビ合成)という手法もあり、コンビナトリア ル合成では、一回の反応でリード化合物から数十個の誘導体ができたりもします。そのようにしてできた化合物の薬理活性を薬理屋が評価することになります。  薬理屋は、まずはタンパク質、細胞を用いて効果を調べます。ランダムスクリーニングのときの実験よりは、精度の高い丁寧な実験を行い、わずかな活性の差 を検出するように気をつけます。指標としては50%阻害濃度(IC50値)や最大活性値などを用います。  で、薬理活性の評価が終わると、構造活性相関表(SAR表 Structure-Activity-Relationshipの略)という表を作りま す。リード化合物の誘導体の構造式をずらっと並べ、構造式の横に、各誘導体の薬理活性を並べます。構造と薬理活性を見比べると、ある構造ではリード化合物 より薬理活性が上がり、ある構造ではリード化合物より薬理活性が下がることが分かります。薬物の構造により薬理活性が変わってくる訳で、その相関をまとめ たものがSAR表です。   合成屋さんは、SAR表をにらみながら、リード化合物のなかのどの構造が薬理活性上昇に繋がるのかを推測します。そして、薬理活性に関係する部位につい て、更に変化を加えた誘導体を合成します。それを薬理屋が評価して、SAR表を作り、それを見た合成屋さんが、、、の繰り返しです。  薬理屋は、今日の化合物の薬理活性はどうだろう?と楽しみにしながら実験をしています。いつ大当たりが出るか、ドキドキします。最初はなかなか薬理活性 は上がらないんですが、大抵は突然に薬理活性が高い化合物が出てきます。  ここまでは、ある程度運が絡んでくるんですが、一度薬理活性が上がるとSAR表が生きてきます。ある程度理詰めでの誘導体合成ができるようになり、ぐい ぐいと薬理活性が上がっていきます。どのくらい薬理活性が上がるかというと、リード化合物よりも100倍から1000倍薄い濃度で薬理活性をしめすように なります。  ある程度薬理活性が上がると、またドングリの背比べ状態になってきます。ここから先は、薬理活性以外の点でのふるい分けが始まります。リード化合物がき まり、合成展開が進んで、薬理作用がある化合物が出てくると、次は動物試験のため、動物に化合物に投与することになります。  動物に化合物を投与し、その化合物が体の中に入ったことを証明するには、化合物投与後に動物の血液を採血し、血液中(正確には血漿中)での化合物の濃度 を測定する必要があります。これらの実験は、動態屋さん(薬物動態専門の研究者)が担当してくれます。  動物へ薬を投与する方法には、静脈内投与(静脈注射や点滴)、経口投与(飲み薬)、皮下投与、腹腔内投与などがありますが、一般的に用いられる方法は、 静脈内投与と経口投与です。どちらの投与にも、クリアしなければならない関門があります。そこで、今回は2回に分け、1回目で静脈内投与、2回目で経口投 与を紹介します。  静脈内投与は、化合物を液体(生理食塩水、生理食塩水などで希釈した有機溶媒、界面活性剤(Tween80)、ポリエチレングリコール(PEG)、弱 酸、などなど)に溶かして、ラット、マウスの場合はしっぽの血管もしくは足の甲から、モルモットの場合は、しっぽがないので足の甲の血管から投与します。 ウサギは耳の血管から、イヌは足の血管からそれぞれ投与します。点滴をする場合には、ももの部分を切開して大腿静脈を露出し、カニューレ(プラスチック製 の細いチューブ)を挿入し、そこから投与します。注射針、シリンジは、ヒトで使うものと同じですが(テルモとかの医療用器具)、大きさは動物によって異な ります。  静脈内投与の利点は、確実に血液中に薬を入れることができることです。化合物は速やかに全身に行き渡り作用を示します。このときの血中濃度推移を検討す ることで、化合物がどのくらい末梢組織に分布するのか(こうして求められた、末梢分布の指標を分布容積といいます)とか計算することができます。   また、急性に効くタイプの薬剤をスクリーニングするときは、静脈内投与が用いられます。例えば、カルシウム拮抗薬やアンギオテンシン2受容体拮抗薬などの 血圧降下剤では、薬を投与しながら血圧をモニターすると、薬剤の静脈投与と同時に、血圧が速やかに下がります。  また、静脈内投与では、人の場合と同様に化合物を点滴することも可能です。点滴することで、薬の血中濃度を一定にコントロールすることができ、各血中濃 度での化合物の作用を評価することが可能です。  静脈内投与の弱点は、化合物が完全に溶けている必要があることです。溶けていない場合、脳や肺や心臓の血管に詰まって、動物が死ぬことがあるからです。 この、化合物を溶かすという所が一番難しく、何に溶かすかをきめるのは経験が物を言います(一応、何種類かの処方があるんですが、うまく行くとは限りませ ん)。  あと、投与にはある程度訓練が必要で、新入社員はいつもここで苦労します。が、なれれば、同じ動物のしっぽにに2,3回くらい投与するのは何とかなりま す。ただ、マウスのしっぽに2週間以上(14回以上)静脈内投与をし続けるのは相当の修行が必要です。  「確実に薬理作用が見れるが、投与するのが難しい」のが静脈内投与とすれば、「簡単だけど、薬剤を効かせるのが難しい」が経口投与です。静脈内投与 (i.v.)について紹介しました。今日は、経口投与(p.o.) つまり口から薬を飲ませる方法について紹介します。私たちが薬を飲むときは、自分で薬をとり、水と一緒に飲み込みますが、動物はそんなことはしてくれませ ん。餌に混ぜて、餌と一緒に食べさせる混餌投与という方法もありますが、餌に均一に薬を混ぜるのが面倒だったり、薬の投与量をコントロールするのが難し かったりする(餌が均一に混ざり、餌の摂取量がそろう必要がある)ので、長期の実験(3−6ヶ月)以外では余り使われません。というわけで、無理矢理薬を 飲ませることになります。  マウス、ラット、モルモットくらいの大きさの動物では、ゾンデという器具を使って薬物を飲ませます。ゾンデというのは、金属製、もしくはプラスチック製 のチューブで、注射器に取り付けられるようになっています。薬は溶液もしくは懸濁液とし、ゾンデを介して注射器で吸い上げます。その後、動物を片手でつか んで(保定するといいます)、口からゾンデを食道にいれ、胃まで押し込んだところで注射器のピストンを押し込み、薬を胃に流し込みます。マンガ「動物のお 医者さん」でラットに薬液を投与する場面がありますが、注射器が口の中に入ってません。これでは、確実な投与はできません。ちなみに、アメリカ留学した人 の話では、アメリカ某有名大学にはゾンデがなく、スポイトで薬を投与してたということです。その人は、スポイトで投与するめんどくささに絶えかねて、ゾン デを山のようにアメリカに持っていきました。ゾンデを使えば、1分間に2−3匹は投与できます。  薬の効き目を左右するのは、血液中の薬の濃度です。薬を経口投与した場合、薬はすんなりと血液に入ってくれる訳ではありません。薬が血液に入るためには 関門がいくつかあります。まずは、胃や腸の細胞がバリアとなります。化合物によっては、これらの細胞にとり込まれなかったり、これらの細胞内の薬物代謝酵 素(薬の構造を変えてしまう酵素)によって不活性化されるなどの理由により吸収されない場合があります。この関門を突破すると、薬は門脈という血管に入 り、第二関門の肝臓に向かいます。肝臓は薬物代謝酵素の固まりの臓器であり、ここで不活性化される化合物は沢山あります。  これら2つの関門により、消化管から血液に入る薬物量が減少することを「初回通過効果(first pass effect)」と呼びます。経口投与による薬剤の効果を高めるには、初回通過効果を抑制する必要があります。そのため、薬作りの早い段階から、消化管細 胞や肝細胞を用い、薬物代謝酵素による不活性化を受けないような化合物を探索する必要があります。タンパク質もしくは細胞レベルでの薬の薬理作用を確認し た後、薬を動物に投与したときの薬物の血中濃度を測定するところまでを紹介しました。薬が吸収されて血液の中に入れば、標的の細胞の元に薬が届くかという と、そう簡単には行きません。例えば、血液脳関門というバリアがあって、これは脳や脊髄に関連する薬について問題になります。脳血液関門については、また 次回以降に紹介します。ここでは、血液に入った薬が、きちんと目的の細胞に届くと仮定して話を進めます。  血液が目的に細胞に届けば、細胞での薬理作用は確認しているので、動物丸ごとでも薬が効くと考えられます。ということで、ここからは生きた動物を使った 実験(in vivo試験 インビボ試験、単にビボってよんでます)に入ります。  薬理作用を評価するためには、動物がヒトの病気(に近い状態)になっている必要があります。このような動物のことを「病態モデル動物」と呼びます。病態 モデル動物には1)病気の元になる物質を動物に投与して作る場合と、2)遺伝的に病気に近い状態のなっている動物を使う場合の二通りがあります。今回は 1)について取り上げます。コラーゲンやプラセンタ肌にいいサプリメント通販で購入  病態モデルの作り方はいろいろありますが、一番単純なのは病気に関与する物質を体外から投与し、病気の状態にする方法。ここでは高血圧を取り上げます。 「ブロプレス」のようなアンギオテンシンII受容体阻害薬の効き目を評価するには、血圧を上げる作用があるアンギオテンシンIIを動物に静脈内投与しま す。この時、血圧をモニターすると、血圧は急上昇し一時的に高血圧の状態を示します。これはアンギオテンシンIIが、Aアンギオテンシン受容体と結合し て、全身の血管を収縮させたからです。この実験において、アンギオテンシンIIを投与する前にブロプレスを動物に与えておくと、アンギオテンシンIIによ る血圧上昇は抑制され、(アンギオテンシンIIによる)高血圧に対する抑制作用があることが推定できます。 タンパク質もしくは細胞レベルでの薬の薬理作 用を確認した後、薬を動物に投与したときの薬物の血中濃度を測定するところまでを紹介しました。薬が吸収されて血液の中に入れば、標的の細胞の元に薬が届 くかというと、そう簡単には行きません。例えば、血液脳関門というバリアがあって、これは脳や脊髄に関連する薬について問題になります。脳血液関門につい ては、また次回以降に紹介します。ここでは、血液に入った薬が、きちんと目的の細胞に届くと仮定して話を進めます。  血液が目的に細胞に届けば、細胞での薬理作用は確認しているので、動物丸ごとでも薬が効くと考えられます。ということで、ここからは生きた動物を使った 実験(in vivo試験 インビボ試験、単にビボってよんでます)に入ります。  薬理作用を評価するためには、動物がヒトの病気(に近い状態)になっている必要があります。このような動物のことを「病態モデル動物」と呼びます。病態 モデル動物には1)病気の元になる物質を動物に投与して作る場合と、2)遺伝的に病気に近い状態のなっている動物を使う場合の二通りがあります。今回は 1)について取り上げます。  次に上げるのは、生体内の臓器に障害を起こす物質を投与し、病気の状態にする方法。ここでは、糖尿病を取り上げます。  たとえば、ストレプトゾトシン(STZ)という物質をラットに静脈内投与すると、膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊されます。インスリンは、血糖値 を下げる働きをするホルモンなので、インスリンを作れないSTZを投与したラット(STZラット)の血糖値はどんどん上がっていき、糖尿病の症状を示しま す。そして、時間が経つと神経障害(感覚が鈍くなる)や、網膜症、白内障、腎障害などの糖尿病合併症を示します。STZラットに神経機能改善薬や、腎機能 回復薬(ACE阻害薬など)を投与することで、神経機能、腎機能に対する薬の影響を評価できます。

ずいぶん科学的の様な印象を受けるかもしれませんが、太りやすい遺伝子、逆に太りにくい遺伝子というものは確かに存在するようです。 だけど、あなたがもし太りやすい遺伝子を持っている事が分かっても絶対に肥満体型になるかと言うと、そうではありませんから、安心して下さい。 例えば10人の太りやすい遺伝子を持っている人が居たとします。 10人みんなが肥満体型になってしまっている訳ではないのです。 太りやすい遺伝子にプラスして暴飲暴食や、だらだらと好物ばかりを大量に食べるなどという自分を甘やかした食生活をしている。 こう言う事が要素として加わってくると太りやすくなってしまいます。 最初から太りにくい人と比べると、かなり部が悪く太りやすくなってしまうそうです。 その逆に、太りにくい遺伝子を生まれつき持っている人が、同じように暴飲暴食をしたり食欲のままの生活をしても太らない人も居るんです。 なんだか不公平ですねぇ。 同じ暴飲暴食を食欲のままに続けても、太りにくい遺伝子を持つ人ならば見た目ですぐ分かるような体重の増え方はしないのです。 その人が持っている遺伝子タイプの違いによって、やはりタイプ別のダイエット方法もあるので沢山のやり方が言われていますが、食生活も遺伝子に応じた方法というものがあります。 純粋な日本人の遺伝子に近いのであれば当然ですが日本食が適しているのです。口コミで評判デルバラスリムビューティ購入 もともと、米や穀物、植物を多くとってきたプロセスがあって消化器も欧米人より長かったりするのです。 だから、日本人の遺伝子を持つ人が欧米で食べられる様なファーストフードや、油脂質を多い食生活を続けていると太ってしまう原因になってしまうのです通販で酵素サプリメントを購入してダイエッ都に励みましょう。 もし、自分が太る遺伝子を持っていたら子供や孫にまで太る体質になってしまうかといわれると、それは絶対に太る体質になるとは言えないのも本当です。 遺伝子は一定ではなく、時に変化をなす事も少なくありません。 だから、あなたが太りやすい遺伝子を持っていても必ずしも太るという事にはなりませんし、だからと言って太りませんよ!とは言えません。 生活習慣の影響でも遺伝子は変化をなします。 近年では遺伝子の影響を明らかにしているのは、生活習慣によるのではないだろうか?とも言われています。